2023年12月26日に有明アリーナにてボクシング世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦がおこなわれWBC・WBO統一王者の井上尚弥がWBA・IBF統一王者のマーロン・タパレスを10R1分2秒KO勝利でバンタム級に続きスーパーバンタム級でも世界主要4団体王座を統一する歴史的快挙を果たした。
試合の印象としては井上の圧勝。
1R開始のゴングがなって両者がリング中央へ出てきたときには両者ともいきなりかなりの近距離で足を止めていて倒す気満々に見えた。
軽い牽制を打ちながら井上が踏み込んで左ジャブからの右ボディのワンツー。
クリーンヒットしたのかガード越しだったかは確認できなかったがそのオープニングヒットの直後からタパレスがディフェンシブに戦い出したように見えた。
その後も井上は攻撃を仕掛けるがタパレスはしっかりとガードをしている。
タパレスはかなり重心を後ろにして構えていたがこれをやるとオーソドックス対サウスポーの場合頭の距離がすごく遠くなる、前の手でのカウンターを取りやすくなる、一気に体重を前へ移動しながら後ろの手でパンチを打つことでかなりの強打を打つことができるなどのメリットはあるがやはり後継してしまっている分後手になってしまったり消極的な戦い方になってしまうという側面もある。
タパレスもうまく攻撃はしているものの消極的だったように見えた。
その消極的に見えているところを井上に一気にたたみかけられてもおかしくはなかったと思うが井上に強引な攻撃をさせずに丁寧な攻め方をさせていたタパレスにやはり気を抜けない強さを感じた。
そしてオーソドックとサウスポーの戦いだったがそこでよく言われる「セオリー」を駆使して戦うというよりは両者とも前足がぶつかっても対して意に介さず戦っているようだった。
井上は右ストレートを打つときに後ろ足を浮かして打って遠いところからパンチを当てにいくということもよくやっていたと思う。
足元を移動しながら打っているのだから土台が安定していないため大概酷いパンチになるものだがこれを相手が脅威だと思わせる威力で打てるのも井上のテクニックの高さだろう。
こういうところでも井上はサウスポーに対しての苦手意識もほとんどないのだろうと思う。
どう見ても優勢の井上は前に出てガードの上からでもかまわずパンチを打ち込んでゆく。
3Rにはタパレスが井上のボディへ左ストレートを打ち込み井上が後退し一瞬コーナーに詰められるとうい場面もあった。
ダメージがあったのかと思ったがその後の井上のリアクションからタパレスに攻撃をさせてカウンターを取ろうという誘いだったようだ。
タパレスは攻撃はしているがディフェンスの方へ意識を集中させてカウンターを狙っているように見える。
ガードをしっかりとしているので井上の攻撃もなかなかクリーンヒットさせられない。
そのような展開が続き終始井上が圧倒していた試合は10Rで終わる。
ガードの堅いタパレスに対しそのガードの上から攻撃をヒットさせることで倒してしまった。
もちろんガードの隙をぬってあたっていたパンチもあったがほとんどはガードに阻まれながらあたるか完全に受け止められてしまっていた。
それでも崩れ落ちてしまうほどダメージを与えていたようだ。
戦前の予想としては前に戦ったWBC・WBO世界スーパーバンタム級チャンピオンのスティーブン・フルトンよりも簡単に勝つことができるというような予想が多かったが全くそんなことはなく気の抜けない緊張感のある試合になった。
そしてこの試合に対して「苦戦」としている記事などがあるのが本当に信じられない。
10Rまで倒すことができなっかったからということらしいが井上はほとんどクリーンヒットももらわずダメージも全くないのではないかと思うような完璧な試合をしてきたのに後半でのKOになったことに対して「苦戦」と言ったら勝利した井上はもちろんそれまで圧倒されながらも諦めず善戦したタパレスにも失礼だ。
そして井上は階級を上げたら通用しないと言われていたことに関しても私はおかしいと思っていた。
体重が重くなってうまくそれを使いこなすことができればパンチ力を上げることができる。
ただ骨格などのもともとの体格によっての「耐久力」が上がることは考えられるのでそれによってパンチを耐えることはできる。
井上が階級を上げたら通用しないと言われているのはそのためだろう。
しかしそれは「KOをする」ということに関してのことだけだ。
井上のKO勝利はとても魅力的で衝撃的だがあのKOは井上のパンチ力だけでなくポジショニングや反応などの高いテクニックからも生まれているものだと私は感じている。
マニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーもボクシングを続けてゆくにあたって階級を上げてゆきKO率は下がり判定になったとしても勝利を収め5階級、6階級制覇を成し遂げている。
私は井上もそれができると思っている。
パフォーマンス次第ではボクシングを長く続けてゆきたいと思っているようだしぜひ挑戦していってほしい。
次戦は来年5月にWBC1位のルイス・ネリとなんと東京ドームで戦う計画があるらしい。
東京ドームでボクシングなんてマイク・タイソン以来じゃあないかな?
是非とも実現してもらいたい。
ルイス・ネリといえば2017年に山中慎介と2度対戦し2度とも勝利しているが1度目の試合終了後にはドーピング検査で禁止薬物の使用疑惑が発覚し問題となった。
そして翌年2018年に再戦をしたがその際には契約体重を守れなかったためまた試合にケチがついた。
それについては日本ボクシングコミッションから無期限の国内活動停止処分を下したが井上との試合のために条件付きで処分解除されるらしい。
日本のボクシングファンにとって因縁のあるネリはぜひ井上に完膚なきまでに叩きのめされてほしいものだ。
常時全力 気楽にいこうぜ
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