その14はこちら
やったことのないクロスレンジでのインファイト。
倒されることなく戦えてはいたが相手はやはり世界レベル。
そう簡単には崩せなかった。
こちらが良い場面を作ってもすぐに帳消しにするような強烈な攻撃を返してくる。
一進一退の攻防が続いた。
そんな中迎えた6ラウンド。
相手の左ボディに合わせて放った右アッパーがクリーンヒット。
相手の足が揃い前のめりに崩れるように倒れ込んできた。
「チャンスだ!」と一気にギアを上げてラッシュを仕掛けたがそこでラウンド終了のゴング。倒しきるには至らなかった。
あとから映像を見返すと自分でも驚くほどコンパクトな右アッパーだった。
相手が効いていたのは間違いない。
そして7ラウンド開始。
まだ「譜面」は未完成だったが少しずつ組み立てられている手ごたえはあった。
しかしここでまた相手の凄さを思い知らされることになる。
インファイトの最中ポジション取りと体力回復を兼ねて安全圏だと思える位置に身を置いていた。
だがその「安全」は完全な錯覚だった。
気が緩んでいた隙を突かれまさかの角度から鋭いボディブローが突き刺さった。
効いたなんてもんじゃなかった。
体がくの字に折れ心まで折れかけた。
そのまま相手の猛ラッシュを浴びる羽目になった。
ガードを固めなんとか耐えようとしたが相手もそんなに甘くない。
じわじわと体力を削られ最初は「チャンピオンまであと少しなんだ!」「ここで終わったら悔やんでも悔やみきれない!」と必死に自分を鼓舞していたがやがて感情が変わっていった。
「ふざけんな…好き勝手に殴りやがって!」
怒りが湧き上がり気づけば「なめんな!」と叫びながら反撃していた。
必死の反撃で相手のラッシュを止めクリンチ状態へ。
お互い体を預け合って立っているようなギリギリの状態だった。
その時体中から湯気が出ているんじゃないかと思うくらい痛みと熱を感じていた。
だがその猛攻を耐えきったことで相手もかなりスタミナを削られているのが分かった。
「今がチャンスだ!」
どこからその力が湧いてきたのか自分でも分からない。
ただそこからは絞り出すような力でひたすらパンチを打ち続けていた。
続く
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