その7はこちら
とにかく目の前の試合に集中し勝ち続けた結果ついに東日本新人王のタイトルを手にすることができた。
これは以前の空手の市民大会で優勝した時以来のタイトルだった。
たかが東日本の新人王と思うかもしれないが自分にとっては大きな意味がありこの先の人生逆転への強い活力になっていたのは間違いない。
その東日本新人王トーナメントの決勝が11月に行われ勝者は西日本新人王と全日本新人王決定戦を戦うことになる。
この全日本新人王決定戦は年の瀬12月中旬から下旬あたりに行われたと記憶している。
その1ヵ月間必ず全日本新人王になるという強い気持ちで日々トレーニングに励んでいたのを今でも覚えている。
そして迎えた決戦当日。
前回の東日本新人王トーナメント決勝で初めて6ラウンド戦い抜いたものの途中で体力が尽きかけた経験があったため今回は同じことが起きないように準備を重ねてきた。
そして試合前の食事にも万全を期した。
食事を摂るタイミングも自分の試合が始まるであろうおおよその時間から逆算をしいつもより多めに食事をとって後楽園ホールへと向かった。
新人王トーナメントは階級の低い順に試合が行われるためミドル級である自分の試合は一番最後になる。
しかしここで予想外の事態が起こる。
前の試合が次々とKOで決着し私の出番がどんどん早まっていったのだ。
「え?・・・やばい・・・どうしよう・・・」と焦りを感じ始めていたのだが案の定予定よりもかなり早いタイミングでの試合開始となりまだまだ腹の中にさっき食べた食事の感覚が残ったままの試合へ突入することとなった。
相手は西日本新人王。
試合経験も豊富でかなり手強い相手だ。
試合が始まると相手は頭を低く構え接近戦で攻めてくるタイプ。
お腹に何度もボディブローをもらうたび腹からゲップが上がってくるのがわかった。
それも不快だったがそれ以上に不快なのは頭を下げて突進してくるタイプだ。
案の定バッティングが起こり瞼の上をカットしてしまった。
相手はパンチ力があるわけではなかったがべったりと頭をくっつけてボディをペタペタペタペタと叩いてくる戦法。
「ドカン!」と強烈なのを打たれるのは嫌だがこのろくにナックルも入っていないオープンブロー気味にペタペタ打たれるのにも腹が立つしレフリーにも散々注意されている頭の突き出しもあって次第にイライラが募っていき限界に達していた。
その時とうとう我慢の糸が切れた。
頭を下げて突っ込んでくる相手に対しその頭めがけて渾身の右ストレートを振り下ろした。
しかしその瞬間右拳に激痛が走った。
「あ!これは!」
続く
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