自己紹介 その13

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日本ミドル級タイトルマッチ。
目指すは世界チャンピオンだがそこに最短最速でたどり着くためにはこの日本の頂点を制覇しなければならない。
新人王の時と同じようにここを獲らなければ先には進めないだろうと考えていた。
日本の頂点言わば富士山の頂上だ。
もちろん山に詳しいわけではないが「ここを登らずしてエベレストなんか登れるか!」なんて思っていた。

当時の日本ミドル級チャンピオンは世界を獲れる実力者として目される選手だった。
周囲からは「無理だ」「まだ早い」「チャンピオンが変わってからにするべきだ」など身内だから心配して言っていたのだろうが心無い言葉としても聞こえていた。
だが敗戦からの復帰を果たし譜面を作るという武器を確立し手に入れた絶好調のダメ男は
「世界レベルのチャンピオン?だからなんだ。だったらそいつを倒して俺が世界へ行く!」こんなことを考えていた。

ボクシングを始めてから5年ほど経っていたのだろうか。
振り返ってみるとあの逃げに逃げて逃げ場がなくなるまで逃げ倒していたダメ男が一念発起して藁にもすがる思いでボクシングを始めついには日本チャンピオンに挑戦するところまで来たのだ。
逃げるなんて思考は1ミリもなくむしろ向かっていって倒してやるなんて意気込みを持つまでになっていた。
自分のことながら人間はこんなにも変われるものなのだなと改めて感心する。

計量をパスし試合をする権利を得て迎えた当日。
コンディションは申し分なかった。
プロのリングで戦うにあたり計量をパスすることは絶対に必要だ。
タイトルマッチにたどり着くまでのボクシングキャリアの中にはもちろん「減量」も含まれている。
その中で何度も勝ったり負けたりしながら減量をし計量をパスして試合当日には最高のコンディションで戦えるスキルも身についてきていた。

最近のボクシングや格闘技界で怪我で欠場したり計量を失敗している選手を見かけるが私は思う。
プロの格闘家としてとしてそんなことしてる奴はそもそもやる資格がないのではないかと。
まあ私の意見に過ぎないし他人のことだからどうでもいいのだが。

そしていよいよ運命の決戦日が来た。
いつものように入場しリングに上がる直前のタラップで吐きそうになりながらリングイン。
両選手の名前がコールされ運命のゴングが鳴った。
2000年8月1日。
この記事を書いている現在から24年前のことだ。

続く

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